トレード裏入門

転売は違法な詐欺罪!? (Part1) 基礎編

今回はトレードとは直接関係ない話で恐縮でございます。

が、読者のみなさまの一部にも関係するかもしれないテーマですので、ここで取り上げて見る次第ですたぬ。

Q 転売は詐欺罪になるのか

先日、こんなツイートがバズっててタイムラインに流れて参りましたぬこ。

 

「転売禁止って言って販売した商品の場合、それを購入して転売した奴も、その転売ヤーから買った奴も、詐欺罪で捕まる可能性がある」

という趣旨のツイートだと存じます。

 

 

・・・転売はただでさえ炎上しやすいテーマ。

これは詐欺罪という具体的な犯罪類型に言及があったためか、ご覧の通りものすごい反響があったもようです。

 

とにかく感情的な話が多くて、先のツイートの反響、リプライや引用RTも、法的な考察というかとにかく煮えたぎっておりました印象。

 

ですが、これをきっかけに、転売が詐欺に問われる可能性について考えてみた次第です。

 

結論から申しますと、特殊なケースを除き、一般に転売が詐欺罪となるとは考えにくいよというのが環の考えです。

注意1! チケット転売判決は特殊な例

おそらく最初のツイートはチケット転売に違法判決が出た例を念頭に置いているのだと思います。

神戸地裁平成29年9月22日のものです。

 

環もこれ調べて判決文読みましたが、評価が難しい例です。

まず地裁判決で確定しておりますし、ほかに類似する判決があまり見当たりませんでした。

また、チケットについてはその後不正転売禁止法ができるなど、独自のジャンルでもありました。

 

諸々考えますと、この判決は先駆的なもの、あるいは例外的なものであり、少なくとも通説として定着しているとは考えにくいと思います。

 

なので今回の記事では、特殊事例を別として、「一般に転売が詐欺になるか」を考えてたいと思います。

 

なおチケット不正転売禁止法については以下をご覧ください。

文化庁 :https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/ticket_resale_ban/index.html

 

注意2! 環は素人だぜ

以下は環なりの解釈です。また環は法律専門家ではありません

単に大学で刑法を勉強しただけのたぬきです。

 

そして、法学の解釈はいろいろで学説もうじゃうじゃあります。

答案を書いたり論文を書いたりでしたら、それらをきちんと検討する必要がありますが、この記事はそういうものではないので、学説毎に細かい検討することは割愛致します。

 

なので詳しい引用とかも致しません。

が、一応参照すべき判例だけ言及しておきます。「n事件」のnは刑法各論判例集の番号です。

 

また、本記事において、環は転売を擁護するつもりも否定するつもりもありません。

詐欺罪になりそうかどうかを検討してみるだけです。詐欺罪以外については検討しません。

 

詐欺罪のおさらい

詐欺罪の構成要件

まず刑法246条、詐欺罪の条文を確認致しましょう。1項と2項がございます。

第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
 
まず、1項と2項に共通のこととして、詐欺罪になる(構成する)ためには、最低限2つのことを満たさねばなりません(構成要件)
 

① 欺罔行為: 被害者に事実を錯誤させ、財物・利益を交付させること

法律用語って何言ってんのかわかんね〜よね。

以下、適宜たぬき語に翻訳して参ります。

 

これは要するに、「相手を騙して、何かしらの財産や利益を寄越させた」ということです。

「もし騙されないで本当のことを知ってたらやらねーよ!」というようなことであれということです。

 

一般的なイメージ的にも詐欺っぽいべ。

本当は欺罔と交付は区別してそれぞれ検討しないといけませんが、簡単にするためこの記事では必要のない限り省略して「欺罔して交付させる」もんだとして行きます。

 

条文に書いてあるのはこんくらい。

 

だが、書かれざる要件があって、何かしら限定されていると考えられております。

それが次の②です。

 

② 重要事項性: 被害者は交付の判断の基礎となる重要事項に関して欺かれた

これは先の「もし本当のことを知ってたら交付しねーよ!」ってことに一定の限定を課していると考えてよかろうよ。

 

 

例えば、こんな事例を考えると、この意味がわかると思います。

 

メルカリに「私はたぬきなのですが、プレステ5を2万円譲ります」と言ってるやつがいたとしよう。

あなたは今時のたぬきはスマホが使えるのか〜と思いながら、それを購入しました。

そいつからプレステ5を買うにあたり、2万円を交付しておりますね。

 

さて、無事届いて、プレステ5おもろいぜ〜とキャッキャしながらふと我に帰って気がつきました。

 

 

・・・あいつは多分人間だ!日本語喋れるたぬきはいねえだろ!

 

 

もし、購入時に相手がたぬき自称してるのを信じていたら、ある意味ここで騙されていたことが発覚した、と言えるかもしれません。

 

しかしまずこれは詐欺罪にはなりません、というのが重要事項性の話です。

 

そいつからプレステ5を2万円で買うかどうかを決めるのに、そいつがたぬきであるかどうかはどうでもいいこと=重要事項ではないです。

なので詐欺にはなりません。

 

 

他方、そのプレステ5は問題なく使用できるって書いてあるのに、完全にぶっ壊れていたりすると、それは詐欺になりえる嘘でしょう。

 

「ぶっ壊れてること知ってたら買わねーよ!」という話になるので。

つまり、プレステ5が壊れてるか壊れてないかは、2万円を払うかどうかを決めるにあたって重要事項でしょう。

 

 

以上を踏まえ、②をいいかえますと、

 

「交付するかどうかの判断にあたり、重要なことに関して騙された場合のみ、詐欺になりえる」

 

ということになろうよ。

逆にいえば「ちょっとでも嘘があったら何でも詐欺になるわけではない」ってことです。

そもそもたぬきであると信じるのはどうかしてんだろ。

 

重要事項性の要求については、最決平成22年7月29日(345事件)を参照致しました。

これの代わりに損害を要求する学説もかつては有力でしたとかそういう話もある。詳しくは刑法の教科書をご覧ください。

1項・2項の違いは客体

客体、つまり何を騙し取られるか」によって、1項と2項が区別されております。

 

 

1項財物です。要は物体そのものだ。イメージしやすいと思います。

 

これに対して2項財産上の利益・・・なんぞや。

 

 

例えば、「支払いを免れること」があげられます。cf. 最判昭和30年4月8日(305事件)

 

「後で払うよ」と言って先に商品をもらい、支払いを要求されたときに「いやもう払ったよ」と言って支払いを免れることをイメージするとわかりやすいと思います。

これは要するに嘘をついて、支払いを免除されようとしてるわけだ。これも詐欺の一種となります。

 

・・・出世払いでたぬきの絵を買った諸君は気をつけような!

 

 

なお、1項違反の財物についての詐欺を「1項詐欺」、2項違反の利益についての詐欺を「2項詐欺」と呼ぶのが一般的です。

 

「いっこうさぎ」が「一個うさぎ」に変換されるという法学定番ギャグ。腹がよじれることはない

 

転売が詐欺になるか、架空事例で考えよう

最初のツイートの趣旨は、「転売禁止って言って販売した商品の場合、それを購入して転売した奴も、その転売ヤーから買った奴も、詐欺罪で捕まる可能性がある」ということだったとしましょう。

環の読解力不足で意図をひろえてなかったらすまなんですが、別にツイートを批判するつもりとかも全くないので、今回はそういうケースで考えるということにさせてください。

 

 

それを反映して、以下の架空事例を考えて見ましょう。

 

[架空事例] 転売ヤーXは、小売店AからメーカーBが製造している人気商品Pを購入した。その際、商品Pの品薄に乗じた転売行為を禁止する旨の注意書きがあったが、Xは転売する意思を秘してそれを無視した。その後、XはオークションサイトBでPを出品し、それをYが落札した。

 

これの何がどう詐欺となりうるのかを考えましょう。

 

① 素朴な一項詐欺で考えてみる

まず、こう考えるのが素直かもしれません。

行為者(犯罪を犯した人)が転売ヤーX、被害者が小売店Aで、詐欺の客体(騙し取られたもの)を商品Pとする、一項詐欺として構成する。これが素直な考え方だと思います。

 

じゃ構成要件を満たすかを考える。満たさなければ詐欺になりません。

交付行為は自明ですので、欺罔があるかを検討しましょう。

 

一見するとこの場合、「転売禁止と知りながら、転売目的を秘して購入した」という点で、目的において欺いている、と言えるかもしれません。

小売店Aは転売目的を持ってるやつには売るつもりがないので、 騙されて売らされた、といえるかもしれません。

 

だが、この欺いた、つまり欺罔ってどういうことかもう少し考えたい。

 

論点(1) そもそも欺罔行為はあるのか

まず、明らかに積極的手段を講じていません。

つまり、わざわざ「いや俺が使うんよ」とか言ってはいません。

 

とはいえ、不作為の欺罔として、真実告知義務違反があるという可能性も考えられます。

これが基本的な問題となると思いますたぬ。

 

・・・だが、宣誓書があるわけでもなし、真実告知義務があるとは特にいえないと思います。

 

例えば、保険加入時に病気であることを隠す場合などはこうした義務があるとされますが、それは保険法で定められた義務だからです。cf. 大判昭和7年2月19日(297事件)

 

また今回の事例では1回きりのことですので、反復継続的取引における信義則上の作為義務もありません。 cf. 最決平成15年3月12日(304事件)

つまり、「いっつも一緒になんかやってる信頼すべき相手に裏切られた」みたいな話ではないわけよ。

 

宣誓書があった場合は話がもっとややこしくなりますが、その宣誓書が有効かどうかは怪しいんじゃねという気がします。もう少し考える必要があるたぬ。

 

論点(2) 転売禁止は重要事項なのか

また、そもそもその店側の転売禁止が法的に保護されるべきことなのかという問題もあるでしょうよ。

「転売ヤーに売ろうが本来の消費者に売ろうが、小売店は何にも不利益はないじゃん」と転売擁護派がよくいってますが、確かにそうかもしれません。

 

そのように考えると、転売禁止は重要事項ではないということになり、仮にそれについて不作為の欺罔が認められたとしても、詐欺にはならない。

 

最初の方に出した、たぬきからプレステ5を買う例を思い出してください。

 

 

したがって、環としては、この①の構成でいくと、Xは不可罰なのではないかという気がいたします。

だから転売が詐欺になった判例がほとんどないんじゃないかと思います。

 

論点(3) 転売ヤーから買ったやつは何で処罰されるんだ

そもそも転売ヤーは不可罰ですと、買ったやつが共犯になることもありえません。

 

仮に転売ヤーが詐欺有罪になったとしても、買ったやつに詐欺の故意を認めることはまず無理だと思いますし、処罰の根拠がよくわかりません。

処罰の可能性を思い付いたら更新致します。

 

結論: 不可罰

というわけで、転売ヤーも買ったやつも、どちらも不可罰だと考えた次第です。

つまり、基本的にはまず詐欺罪は成立しません

 

「①とは違う方法で詐欺を認める余地はないのか!?」

ここで何としてでも詐欺にしたい何とか詐欺を構成するように考えたいんだと頑張る道はあるのか!?

環としては、転売を法的に取り締まるにしても詐欺罪以外で考えた方がいいとは思います。

詐欺とするには結構難しそうです。

 

・・・しかし実は、①とは違う構成の可能性がありそうな気がしますたぬ。

 

詳しいことはまたいずれ考察して見ますが、ヒントだけ書いておきましょう。

 

 

先にも書きましたが、

 

「転売ヤーに売ろうが本来の消費者に売ろうが、小売店は何にも不利益はないじゃん」

 

転売擁護派はこんな風に考えるんじゃねと申しました。ってかネットでよく見るわな。

 

今回の結論は、「小売店は」被害者にならないから、「小売店を」被害者とする詐欺は成立しない、ということでした。

 

そうだ。違うやつを被害者として構成できないか!?

 

しかし、①のまんま、被害者だけ別の誰かに代えても多分うまく行きません。

環はそこで別ルートを考えました。

 

気になる方はPart2が出たら読んでみてください。

結構テクニカルな話になって面倒だと思うので、面倒だと思う方は読まなくていいと思う!

 

環のメイン口座はAXIORYのnanoスプレッド口座

指数・FX・ゴールド・原油などに加えて、個別株のCFDもできるようになりましたぬき。

名前の通りスプレッド面も優秀でスキャルピングでも重宝しております次第。